レオモン

樹莉のパートナーは、シリーズ構成作業を始めた当初は決まっておらず、しかし最初のメイン・デジモン以外では最初の準主役デジモンとなる事から、慎重に考えました。
これまでは、同性同士がパートナーとなる事が殆どでしたが、樹莉には男性(タイプ)のパートナーが良いのではないかと考え、一年目の『アドベンチャー』で強い印象を残していたレオモンが選ばれました。

初登場回は、浦沢義雄さんの脚本です。それまで浦沢さんは、テイマーズでは叙情的なムードを押し出したシナリオを書かれていたのですが、21話『樹莉のパートナー!? 私のレオモン様』では、あの伝説的な『不思議少女シリーズ』のスラップ・スティックな浦沢さんならではの持ち味を前面に押し出した脚本を書かれています。
数年前に、日本のミュージカル映画をレヴュウするアンソロジー本『歌えば天国』に、幾つかの文を寄稿したのですが、その中にTV番組『歌う!竜宮城』についても私は自ら提案して執筆していました。この作品に限らず、『ちゅうかなぱいぱい』などに代表される浦沢義雄脚本作品が私は非常に好きでしたので、構成役として一緒に仕事が出来たのは本当に幸せでした。

樹莉とレオモンの関係については、後にシリアスな展開となる事を想定していたので、ややシリアスな側面も見せておきたいと、24話で私自身が「その後」を書いています。

とは言え、レオモンがベルゼブモンに倒される――という具体的な事まで決めてはいませんでした。

デジモンの言わば原則的なルールでは、デジモンは相手に倒されその姿を失っても、デジタマに戻り、蘇ります。
ゲームとしては、それがリーズナブルであるし、またゲーム内(デジタルワールド内)特有の事象としても不自然ではありません。
しかしテイマーズという物語は、基本を現実世界に置いたもので、デジモンそのものをより現実的な存在として描こうという趣旨の構造になっています。
そこで、やはり死んでも蘇るという死生観を導入するのは、非常に抵抗がありました。
また、普通の小学生が命を賭して(という意識ははっきり無いものの、状況的には明らかに)闘うという物語構成に於いて、死という事を軽々しく扱ってはならないとも考えていました。これはテイマーズに限らず、子ども向けに作る作品全般的について思うところです。
(これは基本構成時から意識していた事で、テイマーズでのデジモン同士の闘いは、相手の全てを自らに取り込む――ロードするという描写にしていたのはそれが理由でもありました。)

意味の無い生など無いのと同じくして、意味の無い死も無い。
シリーズ後半の展開を通じて、描くべきこと。それを伝える為には、死というショッキングな出来事を描くのは必然でありました。
ただ、ここで非常に悩んだのは、レオモンにそれを“再び”背負わせていいのだろうか、という事でした。
一年目の『アドベンチャー』にても、レオモンは子ども達を救う為に命を失いました。全く異なる状況ではあっても、テイマーズにて再びレオモンに死を迎えさせるのは、良い事なのかどうか。
アドベンチャーから引き続き参加している脚本家の人たち、またアドベンチャーのシリーズ・ディレクターであった角銅さんらに相談しつつ、これもまた最終的には私が自分で答えを出しました。

レオモンは、勿論アドベンチャーにてレオモンを演じられていた平田広明さんの声を得ています。