クルモン

パートナーがおらず、進化もしないマスコット的なデジモン。
企画原案として決定されていたクルモンの立場でした。また、多くのデジモンに強大な進化の力を与える存在である、という事も原案には既に提示されていました。
デジタルワールド篇の終わりまでは、まさにその通りの存在として、ストーリーの中にクルモンはいました。

声を演じられた金田朋子さんが、よくインタヴュウで答えていた様に、クルモンはパートナーがいないから、見ているみんなのパートナーの様にかわいがって貰いたい――という願いも込められていたのだと思います。

アドベンチャーのデジモンは、独特な語尾をつけたり、方言で喋るという事で強い印象を与えるキャラクターが多く存在していたのですが、これは全く私の個人的感覚により、テイマーズでは基本的にデジモン達の喋りも、子ども達と同じ様な普通な言葉使いにしていました。
ただこのクルモンだけは、より強烈な印象を与えたいという事で、例外的に「〜〜だクル」といった語尾をつけています。
スタッフ内では、クルモンはパートナーもおらず、また、いきなり誕生した存在であるので、クルモンという名前も自分自身でつけたのだろう。語尾もそれから来ているのだ、という理解をしていた様です。
「〜〜でーすか?」という、丁寧な言葉使いのイントネーションなどは、貝澤監督が指示されたものでした。

クルモンが、本来的にはヴァーチュアル・クリーチュア=デジモンではなく、進化を促すプログラム・データであった、という想定をしていたのですが、問題はその力を昇華させた後です。
ドラマに於けるクルモンの役割が、そこで終わらせてはいけないと考えていました。
クルモンがどういう子だったか。タカト達、そして樹莉とどう触れ合ってきたか――。その流れの上で、クルモンがどう「頑張る」のか――。
その思いで書き上げたのが、49話でした。


クルモンの、プログラム状態の呼称「デジ・エンテレケイア」、エンテレケイアとはアリストテレスの用語で、あるものがその可能性を完全に実現し、その目的に至っている状態を表すのですが、人工知性研究分野にても、論文で引用されるタームです。