まずは、データを等サイズの三面図に書き出し、プリントアウトした。
 それを元に、大まかなフォルムを作る。オーブンで熱する事で硬化する粘土を用いた。これなら納得がいくまで、固まらない状態で作業が出来る。
 ディテイルもなにもない、人の姿が出来るまではそう時間は掛からなかった。
 この首のないボディを手にしていると、ある事に気づいた。
 1/6というサイズは非常に大ざっぱなものだ。身長が150センチ以下の人もいれば、175を越える女性だって外国には多い。
 ファッション・ドールのサイズ自体も、製造会社によって数センチの違いがある。
 しかし、このデータの示しているサイズは、見覚えのあるものだったのだ。
 モニタの上に立っている人形の一つを降ろし、服をとって比べてみた。やはりそうだ。
 先に書いた、人形服専門ブティックが、最近売り出した、新しい設計の間接可動素体と、このデータのボディは極めて近いサイズなのだ。
 ボディに関しては、この間接可動素体を修正していくことにした。
 最初から粘土で原型を起こすよりも楽なのも確かだが、これを選んだのは、このボディが発売されたのがつい最近だという、その“偶然”を、この私の愚かしい取り組みの最も愚かしい要素に組み込みたかったからだ。
 全ては偶然であり、私にとっては、必然なのだ。

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