冥界の奈落
シリーズの最終展開を苦吟しつつ構想していた時、ニュースで知ったのがこの巨大な縦孔だった。東京都内に整備されつつある共同溝のジャンクションとなるもので、シールド掘削マシンが下ろされる前に、こういった工事がされているという告知の為に、一日だけこの場所で能楽が催されたという記事だった。
ここでロケーションが出来ないかと、プロデューサーの鈴木氏に調べて貰うと、2003年の年内一日だけなら撮影許可が下りるという。
シナリオの作業は未だ最終話まで行きついていなかったが、この場所で撮影する分だけは早急に上げねばならない事になった。
しかし、やはりこの場面だけを先に書くというのは無理があり、結局スケジュールを前倒しにし、最終話までのシナリオを早く執筆する事になった。

ここにある画像はシナリオハンティング時に、小中が撮影したもの。12話の高橋巌監督、最終話の服部光則監督と共に、虎ノ門交差点直下にある共同溝工事現場へ潜った。
圧倒的な雰囲気は、映像にも表れている通り。
左は、横穴である共同溝の一本。ここを通って賀茂が現れるという想定でシナリオを書いたが、結局は撮影する時間が無かった。
朝から夕方までの極めて限られた時間で、相当な分量のシーンが撮影されたが、これが実現出来たのは、服部、高橋両監督に加え、本来担当ではない北浦嗣巳監督、清水厚監督までもが撮影に応援で参加し、現場を動かした事による。
複数監督がこれほど相互に協力的な作品は、私には経験が無い。